保健科学東日本でも検査可能な結核性髄膜炎とは?

保健科学東日本では、結核性髄膜炎を調べるTB‐PCR検査を受託しています。
結核性髄膜炎とは、結核が原因で発症する髄膜炎です。
結核性髄膜炎を発症すると、頭痛や嘔吐、発熱や痙攣のほか、意識障害や嗜眠などの症状がみられます。
結核性髄膜炎は肺結核を合併していることも多く、感染症法では2類感染症に分類されています。
感染症は感染力や罹患した際の重篤性などを総合的に判断し、危険性に応じて分類されます。
2類は5段階ある感染症の中でも2番目に位置しており、感染した場合は早期の対応が求められます。
結核患者の中でも結核性髄膜炎を発症する例は少ないものの、医療環境の整っている日本においても致死率や後遺症を残す確率は20%前後と言われています。
したがって、結核性髄膜炎が疑われる場合は、早期の検査が求められます。
保健科学東日本では、Nested PCRにて結核性髄膜炎かどうかを診断します。
Nested PCRは、1対のPCRプライマーの内側にもう1対を設定し、2ステップのPCRを行うため、いくつかあるPCR法の中でも感度と特異度をより高める方法として注目を集めている検査方法です。
なお、保健科学東日本で結核性髄膜炎の検査を始めるにあたっては、日本大学医学部の中山智祥教授から技術供与を受けています。
結核性髄膜炎を診断するには、髄液所見での糖とクロールの低下、ADAの上昇が参考とされており、確定診断するには、髄液検体からの塗抹と培養に結核菌の証明が必要です。
しかし、結核菌の培養は4~8週間要するにもかかわらず、検出率は60%と低いです。
加えて、髄液所見では典型的な所見を呈さないこともあるため、問題視されていました。
しかし、保健科学東日本の行っているNested PCRを用いた方法なら、検査のために必要な髄液は1.0mL、結果がわかるまでに要する日数は6~10日間です。
短時間でより高い感度で検査することが可能です。
これまで感染性の髄膜炎が疑われるにもかかわらず、髄液の塗抹や培養、PCR検査法といった検査で陰性だった場合でも、保健科学東日本で検査をすることで陽性が判明する可能性があります。
ただし、この検査法ではコンタミネーションの影響を受ける可能性があるため、採取に当たって十分な注意が必要です。
また、臨床診断を行う際は、症状や他の検査結果など合わせて総合的に判断することが求められます。
他にもM. bovis BCGの一部の亜種は検出できない可能性があるなど、注意事項もありますが、これまで結核菌の培養にかかっていた期間を大幅に短縮し、早い段階での確定診断に役立ちます。